Movie - The Kite Runner

映画のポスター / 原作本表紙
ここのところ、最近みた映画は自分の中で結構ヒットしています。観たものを全て記事にしたいくらいですが、なかなか追いつかず。。でも、この映画「The Kite Runner」はきちんと自分で覚えていたくて、重い腰を上げて書くことにしました。
原作は日本語版(表紙安易すぎか考えなさすぎ…)も出て、映画はつい最近、都内の単館系にて公開されたようですね。
【ストーリー】
アフガニスタン首都Kabul カブールの中心地で厳格な実業家を父として生まれ育った少年Amir アミールと、使用人の息子で常にAmirに付き添い親友のようにして育ったHassan ハッサン。Hassanのもつ誰からも愛される大らかな性格、正義感、凧揚げの天分の才へのAmirの尊敬と羨み、さらに裏切りという苦い過去を抱えつつ、1979年のソ連アフガン侵攻を機に情勢の危うくなったアフガンを離れ父と共にアメリカへ移住するAmir。20年後、成長したAmirはその過去と対峙するべくタリバンが勢力を誇るアフガンへ命をかけて戻ることに…。
※ 日本公開のトレイラーをみる - > こちら

原作はKhaled Hosseini ヘイルド・ホッセイニ(日本ではKを発音し「カーレド」と読んでいるようです)の処女作として2003年に英語で書かれ出版されており、本の主人公同様作者自身もアフガニスタンで生まれ育ちアメリカに移住しています。この時期にアフガニスタンを舞台にした映画というと何だか現在のアフガンの不安定な政治情勢や他国の干渉を批判もしくは肯定する平和主義映画なのかなと思いがちですが、確かにそういったメッセージも含んでいるのかもしれませんが、もっと人間の中身にぐっと焦点を当てており、悲惨な状況下でそれぞれ懸命に生きている人々の心を追っている素晴らしいストーリーだと思います。
過去に犯した過ちがほんの小さなことであれ、そによって起こった悲劇は変えることはできないけれど、その後の人生の中でどう生きていくかによって、過去を引きずり続けるのか、フタを閉めるのか、もしくは決着をつけ前向きに歩くようになれたりするんだなぁって気づかされます。その過ちは子どもだろうが、おとなだろうが、裕福だろうがなかろうが、するときはするし偶然が重なって避けられないこともある。。
そう考えると、はじめはこそばゆいと感じた邦題も、かなり納得のいくものではあります。
※ 主人公Amir(大人)を演じた俳優Khalid Abdalla ヘイリッド・アブダラのインタビュー(英語)はこちら
トレイラー(英語版)はチェックしていなかったけれど、観た一番の動機は原作でした。昨年1月に受講したESLの教科書に採用されていたのです。抜粋されたその部分だけ読んで、短いながら登場人物の人間模様や心の動き、情景や時代背景が丁寧かつ鮮明に描かれており素晴らしい本に違いないと確信していました。実際本を買ってすぐに夫側の家族に貸してしまったので結局まだ読めていないのですが、本が帰ってきたら映画に出ていた景色を思い浮かべながら読みたいと思っています。
映画の中の舞台はとても美しく(特に凧揚げ大会のシーン)、タリバン勢力化に設定が変わってもその殺伐とした風景を疑いもなく観ていたのですが、後で知って驚いたのは撮影のほとんどが中国で行われたということ。確かにアフガニスタンでの映画撮影は事実上無理なのでしょうが、中国とは!そういえば、アフガニスタンではこの作品の上映も禁止されたのだとか。描き方的にタリバンに対してかなりチャレンジャーだった気はするけど。。
多くの俳優さんたちが初めてなのか、IMDbの記録に残っていないだけなのか判らないのですが、子役たちはきっと初めてなのでしょう。とても活き活きと輝く演技で(素かもしれない)、観る側も物語にすんなりと入り込めた気がします。特にHassan役の子どもが素晴らしかった(写真右上)!!!それと主人公Amirの父親( ↓ )。

ひとつだけ残念だったのは、このタイプの凧揚げ(Kite Fighting、アフガンのものはAfghan Fighter Kiteとして区別されているようです)についての詳しい説明がされていなかったこと。1人が糸巻き(Spool)を持ち、もう1人が糸を掴んで凧を操縦することは観ていれば何となく掴めると思いますが、重要なのは凧糸は他の凧と糸を切合う戦いをするため砕いたガラス(グラスファイバーなど)で綿もしくはナイロンの糸をコーティングしてある、という点です。操縦する側は素手で糸を掴む(現代ではもしかしたら手袋でもしているのかも?)ため、通常の状態はもとより、風に乗れば糸が引かれてグラスファイバーによって手や指を切ってしまうのです。

左:操縦者はこのように糸を持ち凧を操る (クリック拡大)
中・右:補助者は両手で順手もしくは逆手にスプール(糸巻き)を持つ
つまり、凧揚げの勝者になるためにはその苦痛とも戦い続けなければならないということです。風を読み、凧を操り、多くの敵を切り落とすうちに、凧糸を操る指も手のひらも血だらけになり、その痛みは相当なものになるはずです。それだけに、勝者は勇者と街中に認められることになります。劣等感を常に持っていたAmirは、少年時代に大会で14の凧を切り優勝した父親に対して「自分がどれだけ男らしく貴方の息子としてふさわしいか」ということを誇示すべく、なんとしても勝たなければならなかった。原作では、その痛みに耐えつつ血だらけになった糸を必死で掴むAmirと、彼の気持ちを十二分に察してそれを見守るHassanの様子が克明に描かれています。
捻じ曲がった親子の関係は丁寧に書かれていたものの、この種の凧上げに縁のない人にはそこまで理解できないと思うので、凧屋のおじいちゃんのセリフの中一箇所だけでもいいから入れたら良かったんじゃないかなと思いました。
※ 凧を揚げている様子がわかるトレイラーはこちら

TIME誌ウェブサイト”Oakistan tackles killer kites”より
しかし本当に危険らしく、パキスタンでは2003年にメタルファイバーを使った糸での凧揚げ中に、対戦相手の喉を切って死亡させてしまい、殺人として扱われたケースがあります→しかも何件も同時に起きており、被害者の中には子どもも数人含まれるとか)
またこの事件からも想像できるように、凧揚げ大会というと広い野原や海などの会場を想像しますが、アフガニスタンやパキスタンなどでは揚げる場所は様々。人の家の屋根に乗っている子どももいれば、そのへんの道端や狭い路地から揚げている子、小さな広場から揚げている子もいて、また移動も自由なようです。

こんなに沢山の凧が一同に空を舞う
アフガニスタンではGudiparan Bazi、パキスタンではBasantなどと呼ばれ、スポーツの一種とされているようです。(アフガンタリバン統治下では禁止されていた時代があったとか)
※ 映画「The Kite Runner」はアカデミー賞2008にてアカデミー作曲賞(Best Achievement in Music Written for Motion Pictures, Original Score)にノミネートされました。作曲家Alberto Iglesiasのゴールデングローブ賞2008ならびに英国の映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA=British Academy of Film and Television Arts)賞にもノミネートされたその美しい音楽の一部は公式ウェブサイトを訪れ「Enter Site」をクリックすると別画面が開き流れますのでぜひ聴いてみてください(SoundをONにする)。
※ また、Hassan役のAhad Khan Mahmidzadaくんは、2007年のブロードキャスト批評家協会(BFCA=Broadcast Film Critics Association) Critics’ Choice Award(評論家賞?)の「Best Yong Actor」に選ばれたそうです。うん、納得。
多くの人たち、特に過去の苦い思い出を抱えて生きている大人たちにぜひ、大切な人と一緒に観てもらいたい映画のひとつです。

